木曜日, 4月 14, 2016

マシュー・ヘイマンのSCOTT Foil2016:パリ~ルーベ2016

正に英雄的勝ち方
圧倒的フリな状況の中
プロ16年目の大ベテランが
つかみとった自身二つ目の勝利

パリ~ルーベという地獄を
ともに戦ったバイクはなんと
エアロロードであった・・・
@bikeradar

マシュー・ヘイマン 身長191cm 体重81kg 37歳


まず初めに、近年稀に見る激闘であった
最終局面で、全員ノーガードでアタックをあんなに打ち合っているのを
みたのは久々・・・あまりにもかっこ良くて軽く泣いてしまったw

(とても長い感想が鬱陶しい人はとばしてくださいw)

ファンマルクのカルフール・ド・ラルブル(☆☆☆☆☆)での
凄まじいアタックから選ばれし5人のパリ~ルーベが始まったと言ってもいい
本来ここで、カンチェラーラやサガンがアタックするところだが、彼等は残れなかった

単純に、ただ単純に運が悪かった。パリ~ルーベはそういうレースだ
運に恵まれ、数多の石畳を乗り越えてきた5人だけの戦い

とは言えラッキーだけではなく、5人のうち4人は高い実力を持っていることが
確かな選手たち、強さを誰もが知ってる選手たち・・・
帝王ボーネン、ファンマルク、ボアッソンハーゲン、スタナード

彼等の強さは折り紙つきだ。しかしたった一人、その中に職人が混じっていたのだ
アシスト職人、時に逃げを打ち、時にスプリントのトレインを引く
プロ18年目37歳のベテラン、マシュー・ヘイマン

1997年にラボバンク下部チームと契約をしてキャリアをスタートさせてから
たった一度、1.1クラスのレース、2011年のパリ~ブールジュでしか
勝利したことがないHCのレースはおろか

ワールドツアーのレースで勝ったことがない

もちろんエースとして走ったこともあるが、それでも勝ったのはたった一回
パリ~ルーベに関しては出場する度順位をあげていたが
この日も、そもそもはエースであるケウケレールのために逃げを打ったのだった

それが最初に形成された逃げグループのうち最後の一人の生き残りとなり
最終的に優勝してしまうのである・・・!

それも何かのタイミングでサラッと逃げが決まって勝った・・・とか
そんな勝ち方ではなく、彼は強敵4名と真っ向勝負し続け勝利したのだ

ボーネン達が逃げ集団に合流したあとも積極的に牽引した

 特に彼が奇跡的な力を発揮しだしたのが動画4:16秒辺
カルフール・ド・ラルブル(☆☆☆☆☆)でファンマルクがアタックした時
スタナードが食らいつこうと強引にヘイマンに接触しながら追い抜いていく

この時、ヘイマンはバランスを崩さぬ様に必死だったのか
明らかにギアチェンジをミスしていた。ここで一気に置いて行かれてしまう
ここから約1分ほど、ヘイマンは完全にテレビカメラから姿を消す

写真で見てもかなり置いて行かれてるようにしか見えないが
彼はこの、最後の星5つの石畳の最中に帰ってくるのである
本気で追走している3人にたった一人でリカバリーしてみせたのだ

忘れちゃ行かんが、彼は75km地点からずっと逃げているし
積極的に逃げ集団を引いていた、しかも一時は一人で集団から飛び出したり
してるのである、意味がわからないw

ファンマルクは結局独創力が足りず、追いつかれてしまうも
残りの石畳でアタックをかけるも難易度が低く、やはりボーネン達を
突き放すことができない


 残り6kmまで仲良く?ローテーションして走っていたところで
スタナードが最後尾から意表を突く強烈なアタック!(6:50)
ここからアタック合戦がの火蓋が切って落とされる

スタナードの独走力というものはピカイチであり、しかも一撃の威力が
とにかくすごい、スプリントも結構ある選手なのでパンチ力で突き放した後
その距離を維持できてしまうのである

ここですごいなと思ったのが、ボーネン自ら全力で追いかけて
アタックを潰すところである。先頭にいるのだからそうするしかないのだが
一切迷いなく全力で潰しに掛かるのはさすが帝王といったところ

とはいえ、スタナード相手に一人で追い切るのは部が悪く
ヤバイ!と思った時にファンマルクがすぐに前に出たのがまた良かった
ここでファンマルクが前に出なかったら持って行かれていた可能性が大きい

他チームとはいえ同郷の尊敬する英雄的先輩の頼みは聞いておくものだw

 この5人の先頭集団の面白いところは、最終局面で5人という人数にも
関わらず誰もローテーションを長時間サボろうとはしない
軽く牽制っぽい感じにはなっているのだが同じくらいの割合ちゃんと引くのだ

 スタナードのアタック以降、ボーネンは後ろが気になって仕方なくなり
しきりに後ろをチラチラ気にするようになってしまう

そうなると残り4人が
ボーネンが左に首をひねって後方確認した隙に右から行けるのではと
猛烈にそわそわしだし、ものすごい牽制状態に発展w

 これではイカンとボーネンが思ったのか無線で指示が飛んだのかは謎だが
(今年からワンデーレースも無線OK)
「・・・まぁまぁ。回ろうぜ」とボーネンが冷静になってくるくると指を回す(9:00)

この時、先ほどのスタナードと同じことをしようとファンマルクが
ボーネンを一番後ろに下がらせること嫌がり、敢えて大きめにスペースを空ける
ヘイマンはそのファンマルクから更に少し距離をとってスペースを空ける

すきあらば後ろから捲くろうという作戦だが、先ほどのスタナードのことがあるので
やはりボーネンが目を光らせておりここは諦めてファンマルクの後ろに戻る

ボアッソンハーゲンがローテーションを回るタイミングで
ヘイマンがアタック(9:25)しかも同時に横からオフィシャルカーが走る抜けた為
スリップを利用して猛烈な加速!(狙ったかどうか不明、後ろは確認していなかった)

しかし、追いかけるファンマルクを振り切ることができず失敗
スタナードは危うく千切れかけた
最後の初期逃げの生き残りがまさかのここでアタックである

ヘイマンを捉えた途端、ボアッソンハーゲンがカウンターアタック(9:45)
ここまで沈黙を守っていた男がついに動く・・・もどうやら脚を攣っているのか
一瞬ダッシュしただけで苦しそうな顔で直ぐにやめてしまう

ここからボーネンの怒涛の後方確認が始まるw
スタナードが気になって仕方がないのか、先頭で20回近く後方を連続確認ww
ローテーションしながらも更に後方を確認していたところ・・・

交代したファンマルクにアタックされるw(10:15)
しかしファンマルクも脚が一杯一杯ですぐに踏むのを止めてしまう
全員同じくらいの脚しか残っていないのを示すかのように

均等に同じ距離、離れていた。ファンマルクの疲労に沈んだ表情で後方確認した
顔を見て、ついに帝王ボーネンが動く(10:30)
しかし、これはボアッソンハーゲンに潰される

ボアッソンハーゲンがボーネンを捉えきらぬうちに
スタナードがカウンターアタック(10:40)
やはりスタナードのアタック力は5人の中で抜きん出ているらしく

この一撃で距離が開く・・・決まる!かに思われたが
やはりここでも、スタナードを追う4名は律儀にローテーションして
しっかり捕まえるのであるw

完全なるノーガードでの打ち合い、ただ只管に互いの脚を削りあう死闘
ボーネンがスタナードを再び捉えると、一度後ろ振り返りアタック(11:30)
最後の一発をこの瞬間までとっておいたのか瞬く間に距離が開いていく

冷静に考えれば、歳をとったとは言え35歳
ボーネンも元といわず、今でもトップスプリンターである
わざわざここまでアタックを連発しなくてもスプリントで勝負すればいいはず

・・・が、今回の場合そうも行かずいかんせん全員スプリントがある
ファンマルクはいぜんボーネンとのスプリントを制したこともあるし

ボアッソンハーゲンもザ・登れるスプリンターで
タフな展開に強いでお馴染みのノルウェー人(通称脚質ノルウェー
スタナードも元々トラックの選手でありスプリントを兼ね備えている

そしてヘイマンもジュニア時代トラックで名を馳せた
万全の状態でスプリントすればまだボーネンに分があるはずだが
パリ~ルーベのスプリントに関しては毎度毎度未知なのだ

 もう先頭のボアッソンハーゲンはボーネンを追えない
それを理解してボーネンはアタックしたのかもしれない
こらえ切れずに後ろに下がるボアッソンハーゲン

ここで再び、ヘイマンがその強さを魅せる(11:50)
誰もがボーネンを追えない中、ヘイマンだけが追いかけて追いついてみせた
それどころか追いついた途端再びアタックしてみせたのだ!(12:10)

このアタックがとにかくすごいアタックで満身創痍のボーネンを
一気に突き放した!何度も言うが最初の逃げの最後の生き残りで
37歳、プロ18年間で1.1クラス1勝のみの男だ

それがルーベを4回制した石畳の帝王を圧倒しているのである
しかしここでボーネンも終わってたまるかと
シッティングで体を左右に揺さぶりながらジリジリとヘイマンに迫っていき

ついに追いついた。追いついた途端、ヘイマンに回れと合図され
躊躇すること無く回るボーネン、とにかく潔いw

ゴールの競技場の目の前まで来たところで
ファンマルクが死力を尽くして追いかけてくる(13:30)
ヴェロドロームに入った瞬間、ドンピシャでファンマルクは二人追いつく

最後のスプリントに向けて息を整えつつ牽制している隙に
ボアッソンハーゲン達が何とか追いつくことに成功
ラスト一周、ヘイマンは迷うこと無く先頭に出る、後方を確認し

ファンマルクが迫っているのを見てスプリント開始(14:50)
ボーネンはファンマルクの後ろに付くことに決めたようだ
大外からスタナードがものすごい勢いで飛び出してくる

ボーネンはファンマルクが伸びないのでヘイマンの番手で行くことにするが
外側にスタナードが来てしまったため挟み込まれて動けなくなる
結果スタナードが垂れるまで前に出ることが出来なかった

ボーネンはヘイマンの番手に着かずに
真っ先にスプリントしなければいけなかったのだ
スタナードが垂れて前に出れた時には、本当に僅かな距離しかなく

ボーネンはヘイマンを捲くることが出来なかった・・・

ヘイマンは最初の逃げに乗り積極的に集団を引き、
時に一人でアタックし、最終局面でのアタック合戦に
正面からぶつかり続け、最後のスプリントを制した

彼は漢の戦いに勝ったのだ、最も英雄的かつドラマチックな勝ち方をした
決して華々しくはないこれまでの戦績がより彼を輝いて魅せた

ボーネンもスプリントの脚を削ることに臆すること無く何度もアタックした
エティックスの作戦は結果的にカンチェラーラやサガンを置き去りにしたが
そのことで彼の英雄性が損なわれることはない

スタナードは目の前でチームメイトが二度も落車したがその度生き残った
落車したダブルエースの一人であったルーク・ロウは捨て身で先頭集団に追いつき
スタナードをアシストして消えていった。彼に報いる結果を残した

ファンマルクはパンクし、落車に遮られ何度もエティックスの
パンツァーワーゲン列車から置いて行かれかけるもその度チームメイトの
決死の働きで不死鳥のごとく舞い戻った

ボアッソンハーゲンはーーー・・・えーー・・・・・・頑張った、うん。

終わってみれば、このパリ~ルーベはとんでもなく美しかった
カンチェラーラが落車したり、サガンが先頭集団に追いつけなかったりと
本命が脱落したルーベではあったけども

最終局面に残った強者達の戦いはかつて無いほど手に汗握るものだった
マジで今回のパリルーベはブルーレイで欲しいw

そんなわけでパリ~ルーベ2016に勝利した
マシュー・ヘイマンのバイクを見てみよう(強烈に長い前フリ)

マシュー・ヘイマンのSCOTT Foil


彼は石畳用のフレームであるソレイスではなく
エアロロードのFoil2016年モデルを使用した
前Foilに比べて快適性86%向上などというワケのわからんウリ文句があるが

単純に前作がそれほどに硬すぎたというだけの話だ
新型になって形状は大きく変わってダサくなり
ブレーキをBB下に持っていくことでシートステーに柔軟性を持たせた

ブレーキは前後ともにダイレクトマウント
あと手前に映ってるのはトロフィー漬物石

クランクは9000デュラエース、パワーメーターはSRM、泥がすごい
チェーンリングは53/44T

変速は電動コンポを採用、スプロケットは25-11T
いちいち書くまでもないが、全コンポ9000デュラエースだ

チェーンは強烈な土埃と泥でカスカスである。油分もクソもないな

走っているだけでマグネットに砂鉄が集まりそうだ
ホイールはシマノC50T
シートチューブが半端ない汚さ、泥塗ってるのかと

サドルはフィジーク・アンタレス

ステムはエアロステムのまま、パヴェの順番が書かれたシートが貼られる
ハンドルはPRO アルミ

しっかりスプリンタースイッチを装備しているが
サテライトスイッチは使用していない

28cのタイヤを使用しているのでクリアランスが限界ギリギリである
コンチネンタル・コンペティションPRO LTD

なんとも優勝者としてはイメージの遠いゼッケンナンバー

新型Foil自体は微妙にヘッドチューブが長くなっていたり
ピーター・デンク会心のエアロロードをこんなかっこ悪くしやがってと
ロクなイメージが無かったのだが、まさかパリ~ルーベで勝ってしまうとはね

石畳用のフレームとは一体・・・とワケが分からなくなってくるが
28Cのタイヤを使えるということのほうが、もしかしたら重要なのかもしれない

そしてリアブレーキをBB下に持って行くということはやはり
振動吸収性を大きく上げられるのだ

空力?そんなもんは上がりませんよ、チェーンステーやBBに隠れてるなら
まだしも、BBにポン付けして出っ張ってるんだもん
風が当たる面積増えちゃってるじゃん

SCOTT自身しっかりと「振動吸収性を上げるためにBB下に付けている」
と明言しているのには好感が持てる

何にしても、オールラウンドエアロロードというものが本当に増えてきた
あのマドン9ですらオールラウンドに活躍できるというのだから
スペシャなんとかっていう会社は相当の変態だなと思ってしまうね

ほ、褒めているのだぜ!

2 件のコメント:

  1. まえふりが本編ですね

    レースの熱量が伝わる熱い文章でもう一回レースを見たくなってしまいました
    影ながら投稿楽しみにしています

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    1. ありがとうございます
      動画とか見返したらまた興奮してしまって・・・
      どえらい長くなっちゃうんですよね

      でもそれくらい今回のパリルーベは特別でした

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